親友とはのろけを聞かせるために存在する

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「え、どういう意味?」 「だってさ。都心にあんな趣味でやってます、みたいなカフェやってて、しかも、徒歩圏におうちあるんでしょ? 賃貸か持ち家か知らないけど」 菜津子の着眼点は、ふわふわした恋愛脳の私と違って、主婦のそれだった。 「うん。マンションもオシャレで素敵だった。2LDKはあったし。…奥さんと住んでたのかな」 なーんてそんな立ち入った話してないけど。 「おうちが資産家なのかな。もう29なんだし、結婚だって視野に入れて、付き合うんでしょ? 相手のバックボーンはちゃんと聞いておいた方がいいよ」 「…菜津子、急に大人になった?」 同い年で同期入社。ランチ仲間の菜津子が、結婚して、急に変わった感じ。 「結婚っていろいろあるからさ。本人同士が好き、ってだけじゃやってけないし」 「何それ」 「新婚ほやほやの菜津子さんのありがたいお言葉よ。心して肝に銘じておいてよ」 「…う、うん」 言ってることはめちゃくちゃな気がするけど、妙な説得力があって逆らえない。これも既婚者という経験値がなせるワザかな。
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