親友とはのろけを聞かせるために存在する

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「だってさあ、結婚って、やっぱり全く違う環境で育った二人が、おんなじ家に住むわけじゃない? そりゃ、いろいろ小さな衝突の繰り返しなのよ。うち初めての夫婦喧嘩、みそ汁の出汁は、鰹がいいか煮干しがいいか、だからね」 話題が生活感丸出しで、思わず吹き出してしまう。 「うちはいちいち取ってなくて、顆粒タイプのだしだよ」 「でもそれで不満に思う人がいるわけじゃないでしょ?」 「うん…まあね。ずっとそれで来てるから」 「それが家が変わった途端に、ほんだし、ありえない、になるから、怖いんだよね。しかも、お互い譲りにくいし。一事が万事、こんな調子で、どう擦り合わせるかの繰り返し。やっと実家同士じゃない『うち』のルールが決まったって感じかな」 菜津子は菜津子で大変なんだな。 本人が割とマイペースだから、傍から見てると、そうは思えないけど。 確かに私、智之さんのこと、あんまり知らないんだよね。 家族のことも、別れた奥さん以外のことは聞いたことないし、あとは…叔母の光さんのことだけ。 智之さんは、自分から自分のことはあまり話さないけれど…、聞いたら教えてくれるのかな。 菜津子と盛り上がってる間に出来ていたペスカトーレを食べながら、私はまた智之さんのことを考える。 次、いつ会えるかな。会えたら…聞いてみよ。
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