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食事のあとは、また智之さんが、今日はネルドリップのコーヒーを淹れてくれた。
普段はこれで飲むことが多いと言う。
簡単そうに見えて、奥が深くて難しそう。
コーヒーを飲みながら、ネット配信の映画を観た。怖くもないし、べたべたの恋愛ものでもない。家族がテーマのヒューマンドラマだった。
「見たら、駅まで送りますね。意外と咲良さんの家までの終電早いので」
「あ」
智之さんに言われて、思わず残念そうな声を上げてしまう。一応、今日は着替えとかメイク道具、持ってきたのだ。もし、そうなってもいいように。
「どうしました? 咲良さん」
少し意地悪な笑顔で聞く智之さんは、きっと私の気持ち、気づいてる。
「や、何でもないです。終電の時間調べ…ひゃっ」
色気のない声が出たのは、智之さんに後ろから抱きつかれて、私の右手のスマホを奪われたからだ。
「やっぱり帰らないでください…って言ったら、どうします?」
私の答えなんて、聞かなくてもわかりきってるのに。
「私も…もっと傍にいたいです」
素直な気持ちを伝えると、智之さんは更にきつく私を抱きしめて、肩に顔を埋める。
「そんなこと言われたら、絶対帰せないじゃないですか」
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