臆病者の恋

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次の日、光さんが店に来た。 余りのタイミングの良さに、野生動物の勘で、僕の変化に気が付いたのかと思ったけれど、考え過ぎだった。 「たまにはおいしいコーヒー飲みたくなるのよね。智ちゃんの顔を見たかったし」 満面の笑みで、満足そうにコーヒーを飲んでいる彼女を見ていると、やはり咲良さんとのことを知ったわけではなさそうだ。絶対、知ったらからかうよなあ。 でも、いずれわかることだから。悩んだけれど、咲良さんとのことは一応光さんには報告した。 「え、咲良ちゃんと?」 簡単に事の顛末を説明すると、光さんはコーヒーをむせかえりそうなくらい、驚いていた。 「嘘でしょ? って、あー、ごめん、信じてないわけじゃなくて」 「ええ、まあ…そういうことになったので、あなたには報告をしておいた方がいいかと思いまして」 「それはまあ当然よね。私は二人の仲人みたいなものだもん」 と何故かと突然ドヤ顔する。 「で?」 「で、と言われても…以上です」 「え、そんだけ? もっと惚気とかあるでしょ? 叔母さん、聞いてあげるよ?」 「結構です」 何処の世界に、自分の店で、叔母にとくとくと惚気を聞かせる店主がいるって言うんだ。 「つまんないの。ま、いいか。今度咲良ちゃんに聞くわ」 「そうしてください」 光さんとの会話はそれで打ち切ろうと思ったのに。 「ねえ、そう言えば、伯父様大丈夫なの?」 光さんは僕の父の心配をしてきた。
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