3714人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
次の日、光さんが店に来た。
余りのタイミングの良さに、野生動物の勘で、僕の変化に気が付いたのかと思ったけれど、考え過ぎだった。
「たまにはおいしいコーヒー飲みたくなるのよね。智ちゃんの顔を見たかったし」
満面の笑みで、満足そうにコーヒーを飲んでいる彼女を見ていると、やはり咲良さんとのことを知ったわけではなさそうだ。絶対、知ったらからかうよなあ。
でも、いずれわかることだから。悩んだけれど、咲良さんとのことは一応光さんには報告した。
「え、咲良ちゃんと?」
簡単に事の顛末を説明すると、光さんはコーヒーをむせかえりそうなくらい、驚いていた。
「嘘でしょ? って、あー、ごめん、信じてないわけじゃなくて」
「ええ、まあ…そういうことになったので、あなたには報告をしておいた方がいいかと思いまして」
「それはまあ当然よね。私は二人の仲人みたいなものだもん」
と何故かと突然ドヤ顔する。
「で?」
「で、と言われても…以上です」
「え、そんだけ? もっと惚気とかあるでしょ? 叔母さん、聞いてあげるよ?」
「結構です」
何処の世界に、自分の店で、叔母にとくとくと惚気を聞かせる店主がいるって言うんだ。
「つまんないの。ま、いいか。今度咲良ちゃんに聞くわ」
「そうしてください」
光さんとの会話はそれで打ち切ろうと思ったのに。
「ねえ、そう言えば、伯父様大丈夫なの?」
光さんは僕の父の心配をしてきた。
最初のコメントを投稿しよう!