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親友とはのろけを聞かせるために存在する
帰りの電車の中で、私は菜津子にメッセージを送った。
――マスターと付き合うことになった(ハート)
シンプルに結果だけを伝えると、ソッコーでレスが来た。
――嘘、何それ、どういうこと?? やったじゃん! 明日詳しく聞かせて
メッセージの後には、食べ物のスタンプ。
ランチ奢れ、ってことらしい。
いーよいーよ、ランチくらい幾らでも奢る奢る。
人間、幸せな時って、人にも優しくなれる。
次の朝。起きて、すぐに智之さんにラインした。
――おはようございます。今日は仕事が遅くなるので、お店に行けないと思います涙
――寂しいですが、しょうがないです。お仕事頑張ってください。
こんな短いやりとりでも、ほっこりと幸せを噛みしめる。
よし、今日も頑張ろう。簡単に気合が入った私は、ベッドから起き出して、支度を始めた。
今日は午前中は、新商品の販売戦略を営業企画と打ち合わせ。午後は取引先めぐり。
一番遠いところは、千葉だから、やっぱり帰りは遅くなりそう。課長はきっと、直帰でいい、って言うし。
スケジュール帳を確認して、メイクをして、鏡で自分の顔を覗きこんだ。
――大丈夫、だよね。にやついてないよね。
プライベートが灰色だろうと、薔薇色だろうと、それは仕事に持ち込みたくない。
「うん」
大きく頷いて、私は通勤用のトートバッグを肩に掛けた。
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