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出会った君は、とても冷たい目をしていた。
歌を拒絶し、私の存在を否定した。
「お前の声が憎い…」
鋭く凍り付くような、汚いものでも見るような蔑んだ眼差しと、恐ろしいほどの嫌悪の表情を無遠慮に剥き出しにして、魔法を使い、いばらで出来た尖った剣を向けてきた。
この世界は理不尽だ。君も私も分かっていたのに…
私たちはその気持ちを分かち合うことが出来なかった。
滅びか創成か…
世界は一つに成ろうとして、壊れようとしていた。
当惑するばかりの私に、無情な事実だけが目の前に突き付けられる。
目の前にいるのは、私を心から憎み、否定する、敵意ある人物…。
憎悪の嘲笑を聴きながら、ただ、呆然とする。
憎悪に屈してしまった…。その悲しみが深く激しく掻き乱す。
私の五感は麻痺を起こし、面と向かって彼を見つめられない…。視界に映さなくなっていく。
感じるのは、気温、見える景色と、そして、聴こえる音。
うだるような暑さに晴れ渡る青い空、うるさいほどセミの声がこだましていた。
すべてが鮮明で、すべてが残酷だった。
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