きみの春を知りたい。

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「最後にしたくないのは、俺も一緒」 渡辺くんの目に、わたしが映ってる。 きっと、わたしの目にも、渡辺くんが映ってる。 こわくて仕方がなくて、でも、わたしがずっと望んでいたこと。 「俺は、相沢さんの春を知りたい」 「わたしは……」 きみの目に映る春を、わたしの知らない春を知りたかった。 だけど、今は…… 「渡辺くんと、春を知りたい」 来年の春には、終わりと始まりの間なんてない。 渡辺くんと、この春を知りたい。 はじめて自分から顔を上げて、渡辺くんの瞳を見つめた。 その目には、桃色の可愛らしい桜の花弁が映っていて、真ん中には桜よりも赤く顔を染めたわたしが、嬉しそうに、笑っていた。
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