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教室に戻ったら、教卓の前に小さな後ろ姿があった。
あれ、処女センセイだ。もしかして、わざわざ日誌取りに来た?
「ないなぁ」
教卓をごそごそやりながら、センセイはそんな独り言をもらす。
真面目だなあ。あと、相変わらず地味。モテなさそう。ほんと処女かも。てか男に全く免疫なさそう。……あ、ちょっとからかって遊ぼっかな。ヒマだし。
不意に、そんな悪戯心が芽生えた。後ろからそっと近づく。
眼鏡を奪って手のひらで目隠ししてみたら、
「ひゃあっ!!!」
みくセンセイが奇声を上げた。何その声、どっから出てるの。ウケる。
「だーれだ?」
「だ、だ、だ、だれ?」
え、本気でどもってる。教室なんだから、どうせ生徒の誰かじゃん。そんなびびるとか、まじおもろいんだけど。
「それ、俺が聞いてんの」
でも、笑いながら言った声で、俺が誰だかわかっちゃったらしい。残念。
「寺島くんでしょ。早く手を離しなさい」
急に冷静な声が返ってくる。
「あたりー」
手を引っ込めたら、みくセンセイが体ごとくるりと振り返った。長い髪からふわっといい香り。へえ、センセイも女のコなんだ。
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