side :Miku

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「あー、遅くなってごめんね。寝ちゃってさ。でもちゃんと書いたよ」   机の上に日誌が広げられていた。彼はそれをとりにいくと、わたしに、はいどうぞと手渡してくれた。目を通すと、男の子らしい踊るような字でしっかり記載されていた。なんだか力が抜けてしまう。 「よかった。書いてくれていたんだ」   そういうと寺島くんは片方の眉をあげて、納得できねえと苦笑した。 「そりゃ、書くよ。みくセンセイが、日誌ちゃんと書いて出して! ってしつこいからねー」   あまり真面目な生徒とはいえない寺島くんが、そういってくれて。予想外だったから嬉しさが余計、清水みたいに胸の内側から湧きだしてくる。日直日誌をぎゅっと胸にだきしめる。 「ありがとう。うれしい……」  よかった。ちゃんとわたしの言葉が生徒に通じていた。さっき、むりやり引っ込めた涙まで出ちゃいそう。 胸にこみあげてきた、ほこほことした温かい気持ちを噛み締めていると、頭のうえにふわっと暖かい感触。 はっとして顔をあげると、寺島くんのおおきな手がわたしの頭の上にあった。
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