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まるで子供にするみたいに、わたしの頭をなでている。顔をみあげると、寺島くんはとても優しげに瞳を細めて微笑んでいた。
まるでとても大事なものをいとおしむように。
焼酎サワーを初めてごくごく飲んでしまった時のように、かあっと熱が顔全体に集まってきた。きっと、とんでもなく真っ赤になっている!
その時にはもう、寺島くんの笑みは、いつもどおり、わたしをからかうような意地悪なものに変わっていた。
「どしたの? 顔、真っ赤じゃん。ちょーかわいー」
「あ、あ、あの、日誌あり、ありがとう。寺島くんも、はやく帰りなさいね。さようなら!」
目もあわせず、投げつけるようにそれだけいうと、日誌を抱え教室をとびだした。
誰もいないのをいいことに、廊下を一気に走り抜け、トイレにかけこむ。
おそるおそる鏡をみると、ゆでダコみたいに真っ赤になっているわたしが見つめ返してきた。
「……恥ずかしすぎる」
男性に免疫がないことを証明してしまったみたいでいたたまれない。熱を冷ますように両手を頬にあて、しばらく鏡の前でにらめっこすることになってしまった。
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