side :Kanata

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「いや、別に」  そっけなく答えながら、落ち着きなく夜道に視線を泳がせる。 意識してなかったけど、この道って街灯がたまにあるくらいで結構暗い。それに人通りもない。確かにこんなとこ、1人で歩いたら危ない。 センセイ気弱っぽいし、どんくさそうだし、変なのに声かけられたら逃げらんなそう。そう思ってから戸惑った。 だって、今までそんなん気にしたことない。家に連れ込んだ女、平気で1人で帰してたから。……人のこと心配したのなんて初めてかも。 「ふふふ、寺島くんって意外と照れ屋さんなんだねー」 俺の戸惑いなんてお構いなしに、みくセンセイは楽しそうに笑う。ま、いーけど。 「あ、ねえ、寺島くんはお店を継ぐの?」 「あー、うん。一応そのつもり。でもまあ、悩むよね」 「悩む? 他にしたいこともあるってこと?」 「いや、そうじゃなくてさ。卒業したらすぐ店で働くか、それとも大学行きながらぼちぼちやるか……」 言いながら、こんな話を誰かにするのも初めてだなって思った。確かに相手は担任で、進路はいつか相談しただろうけどさ。 なんでペラペラ喋ってんの、俺。変な感じ。
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