side :Miku

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寺島くんが、こんな素直に話をしてくれるなんて。ちょっと照れたように、だけど誇らしげにお店のことを語るのも、進路に悩んでいる様子も、ごく普通の高校生みたいで新鮮。 普段の、女の子にモテまくって、どこかチャラチャラした雰囲気の寺島くんとは別人みたい。 もしかしたら、担任としてわたしを信頼してくれているのかもしれない。教師になってからずっと感じていた不安や自信のなさ。それらがほんのすこしの自信と希望になる。 嬉しくて嬉しくて。すこしでも力になりたいと思う。 「そっか。色々考えちゃうよね。でもお店を継ぐことを決めているなら、進路は自ずときまってくる気がするな」 「ふーん、どんなふうに?」 神妙に聞いている寺島くん。いつもは眠そうな顔をしているか、からかってくるばかりなのに。余計に力がはいる。 「たとえば料理の勉強をしたいなら、調理の専門学校にいくのが一般的だよね。でも料理はお父さんから習って、まず大学にいく、という選択肢があるなら、経営学部や商学部はどうかな」 「経営学部……」 「そう。お店を継ぐ、ということは将来お店を経営するということでしょ?経営について大学で勉強することは、絶対に役に立つと思うの。簿記もやるみたいだし。ちゃんと目的があるから、勉強にも興味をもって取り組めるはずだよ」 寺島くんを見上げると、へーと思案顔で呟いた。そこまではよかったのに。 なぜかそのあと、いつものからかうような、いたずらっぽい表情(かお)をしてニヤリと笑った。
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