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「子どもみたいな顔してっけど、言うことはやっぱセンセイだね、みくちゃん」
先生モードで無防備だったわたしは、いきなり”みくちゃん”と言われ、一瞬で頬がかあっと熱くなってしまった。
「一応これでも大人で、あな、あなたよりずっと年上なの。そ、それに先生をちゃん付けで呼ぶなんて、ダメ、ダメでしょ!」
どもりまくるわたしを、寺島くんが見逃すわけがない。獲物を追い詰めるように、ここぞとばかりに畳み掛けてくる。
「わー、顔まっか。かわいー。そうやって俺のこと誘ってんの?」
「はああ?! なになに、なにをいって……」
その時だった。強く腕をひっぱられ、気がついたら寺島くんの腕のなかにいた。
「寺島くん?!」
そのあと、道が狭いにも関わらず、車がかなりのスピードで、私たちのすぐ横を走り抜けていった。
ぶわっと強い風圧がかかり、寺島くんがさらに強く、守るように抱き締めてくる。
彼の腕のなかで、テールランプが遠ざかっていくのをぼんやり見つめた。
「あぶねー運転!でもみくちゃんもさ、ちゃんとまわりを見てないと、ひかれて死ぬよ?」
胸から直接響いてくる声。呆然としたまま顔をあげると、びっくりするような至近距離で、寺島くんが見つめ返してきた。
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