side:Miku

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「黙って」 人差し指でわたしの唇を封じて。それからゆっくりとくちびるの輪郭をなぞる。 「俺のいうことだけ聞いて。そういったよね?」 指先から伝わる彼の熱。 口許には笑みを浮かべているのに、どこか苦しげにわたしを見つめる瞳。 アンバランスさに潜む色っぽさ。背中がぞくりと震えてしまう。 彼がわたしの唇に指を差し込み、舌先に触れた。 身体が戦慄(わなな)く。その勢いで、彼の指を軽く噛んでしまった。寺島くんが苦しげな吐息をついて瞳を緩める。 砂漠のなかで水を求めて彷徨っていたひとが、ようやく泉を見つけたときにみせる、興奮と安堵が入り交じっている表情に似ている。なぜだかそう思ってしまった。 指をそっと引き抜いて、わたしをみつめたまま、自分の指をペロリと舐めてみせた。 唇が勝手に震えてしまう。 彼の瞳に囚われて動けない。 ゆっくりと近づいてくる整った顔を止める事なんて、できない。 ううん、わたしはこうなることを期待していたのかもしれない。 寺島くんの唇がわたしの唇に重なり、熱を帯びた吐息が混じり合う。 経験なんてほとんどないから、よくわからない。けれど唇が触れた瞬間に分かった。 こんなキス、したことないと。 絡め取られた舌は、彼の思い通りにされてしまう。吸われ、()まれ、軽く歯をたてられる。まるで本当にたべられているみたいに。 腕を突っ張って彼から離れようとしたけれど、逆に腰をぎゅっと引き寄せられ、抱きしめられてしまった。 息ができない。彼の腕を強く掴むけれど、勢いは止まらない。身体の内側まで、彼の激しさ、熱に冒されていく。
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