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身体の内側にある芯が溶けだしていくみたい。立場や年齢の差とか、そんなことすべてが、どうでもよくなってしまいそうになる。
どれくらい時間が経ったのだろう。
ようやく唇を解放されたとき。
全てをはぎ取られてしまった人のように、呆然として寺島くんを見つめることしかできなかった。
「……どうして?」
混乱したままそう呟くと、寺島くんはふと微笑んで、わたしの髪の毛のそっと撫で、耳元に口を寄せた。
「みくのこと好きだから」
まるで同級生の女の子を口説いているような口ぶりで、躊躇うことなくそういった。
その瞬間、ハッと我に返る。
これは彼がいつもしている恋愛ゲームだ。
反射的にありったけの力をこめて、寺島くんを突き飛ばしていた。
机にぶつかって体勢を崩し、驚いた表情で、わたしをみつめる寺島くんに向かって叫ぶ。
「みんなにそう言って、こんなふうにキスしているの? ……誰でもいいくせに! からかわないで!」
どう考えても、教師としての発言じゃない。それでも止まらなかった。涙が零れ落ちそうになるのをこらえ、俯く。
情けなくて苦しくて。胸が痛い。
寺島くんのことをまともに見れない。
視線を床に落としたまま、わたしは教室から飛び出した。
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