side:Kanata

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「──こいい、から……」 「え? なに?」 「て、寺島くん、すごくかっこいいからっ!」 今度はシュークリームを投げつけてきた。しかも中身がスッカスカで、クリームどこだよ、みたいなやつ。今日日、コンビニでももっとマシなの売ってる。 「あのさ。それって俺じゃなくてもよくない? イケメンなら誰でもいいってことでしょ?」 「ちっ、ちが……」 「あ。それとも、イケメンみんなに言ってんの? 好きだって」 立ち上がって、スパイクのつま先をトントンやりながら、その子の顔を見たら。 「……もう、いいや。ごめんね」 目に涙をいっぱい溜めて、彼女は笑った。 「……そ。じゃ、部活行くね」 俺はなんか居心地が悪くなって、そのままグラウンドに走っていった──。 ……もしも、あの中1の秋に戻れるなら。もう名前も忘れちゃったあの子に謝りたい。 今なら、自分がどれだけガキだったかわかるから。どれだけ傷つけたかわかるから。 人を好きになることは、苦しい。 好きな人に想いを否定されるのは、もっともっと苦しい。 苦しくて、苦しくて。吐きそう。
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