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5時間目。窓の外では、少し傾いた日差しの中で、どっかのクラスがサッカーの試合中だ。
そんな光景に、風化したはずのほろ苦い思い出が蘇ったのは、こないだあんなことを言われたから。
『みんなにそう言って、こんなふうにキスしているの?』
『誰でもいいくせに! からかわないで!』
昔あの子に犯した罪は巡り巡って、罰として自分に跳ね返ってきた。
こういうの、因果応報って言うんだっけ? 自信ないから国語のセンセイに訊かなきゃわかんない。
「……で、12行目の『それ』が指すものは……」
心地よく耳を撫でる、小鳥の囀りのような声。
でも、その国語のセンセイは、あの日以来、もう俺を見ようともしない。無機質な眼鏡のレンズの向こうに、その瞳をしまい込んだままだ。
ねえ、みく。どうしたら俺を見てくれる?
どうしたら、俺の気持ち、わかってくれるの?
開いた窓から緑の風が入り込んで、カーテンを大きく揺らした。
「では、続いて38ページ……」
どうしても交わらない視線。
胸が苦しい。誰か助けて。
恋の仕方なんて、ぜんぜん知らない。
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