side:Miku

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5時間目、昼下がりの現代国語の授業。 お昼を食べた後だからか、生徒たちの半分くらいは意識がここにあらず。ぼぉっとした瞳は、黒板を通り抜けて違うところをみているか、机に突っ伏して寝ているか。 この時間帯の授業は現国の教師にとっては鬼門。 けれどそんな緩んだ空気のなか、わたしは緊張している。ひとり、まっすぐこちらをみつめてくる視線を、痛いほど感じてしまうから。 それでもそんなもの、微塵も感じていないフリをして授業をする。たまに声が震えそうになってしまうけれど、この雰囲気ならきっと誰も気づかない。 「じゃあ今日はここまで」 そういって教科書を閉じると、ようやく眠そうな空気が綻びはじめる。 起立、礼! 日直さんの掛け声を境に、教室がざわめきに包まれたから、そこに紛れてため息をひとつついた。 今日も彼のほうを全く見なかった。ずっと見ないわけにも、話さない訳にもいかないのはわかっている。
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