side:Miku

2/4
前へ
/99ページ
次へ
だけどキモチが落ち着くまで。きちんと教師として彼と向き合えるようになるまでは、こうするしかない。 「先生」 そう呼びかけてきた声に、ぴくりと身体が反応する。恐る恐る声の方に振り返った。 硬い表情をした寺島くんが、立っていた。 見つめあう数秒間。その数秒間で一気に封印しようとしていた感情が、溢れ出してしまう。 彼との激しいキスに溺れた、痺れるような切なさと喜び。好きだと囁かれたあの声に、現実に引き戻され、彼を突き飛ばしたときの絶望感。 それらすべてがありありと蘇り、胸を抉られる様な痛みに、たまらなくなり、視線を床に落とす。 でもここは教室で、わたしは教師だ。ひとつ吐息をついて手のひらをぎゅっと握りしめた。それから。教壇のうえに立ってもまだ見上げてしまう彼をもう一度、見つめ返す。すべての感情を押し殺して。 「なんですか、寺島くん」
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加