side:Miku

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あれから何度も寺島くんに声を掛けようとしたけれど、彼は頑なに、私を避け続けている。 以前は彼の視線が刺さるのが、あれほど苦しかったのに。今は全くこちらを見もしないし、授業が終わったら、さっさと教室からでていってしまう。 だからこれから。強行手段を使う。 「ホームルームはこれで終わりにしますが、その前に、寺島くん」 開放感からざわめきが広がる一歩手前の教室。そのまえに注意深く、でもさりげなく寺島くんを呼ぶ。クラスの視線が一気に彼に注がれる。 机に突っ伏していた彼がゆっくりと顔をあげた。 本当に久しぶりに目が合う。私の中にいる女の子が、不安と一緒に無条件に湧き上がった喜びに震えてしまう。 だけど寺島くんは、温度が全くを感じられない、氷のような瞳をむけてきた。胸の奥が軋むような痛みが襲ってきて、指先で胸ボタンのあたりをぎゅっと握る。 それでも教師の私はその痛みを感じないふりをして、言葉を続ける。 「寺島くんは残ってください。この前、進路の話が出来なかったから。今日はこのあと教室でしましょう?」 彼はじっと私を見つめた。心臓が勝手に早打ちをはじめてしまう。ほんの少し、その瞳が熱を帯びた気がしたのも束の間。寺島くんはすぐに視線を断ち切って立ち上がった。 「悪いけど、用事があるからムリ」 素っ気なくそう呟くと、そのまま荷物を肩にかけて、教室から出ていってしまった。
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