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私をからかってくる時、その瞳は優しくて温かい光があった。そして私を求めるように激しくキスをしてきたときは、焦げてしまいそうな情熱や痛みを溶かし込んでいたことも思い出す。
今はほんの少しの好意も、そして嫌悪すらも感じられない。何も見えない。
失ってみて、それらが私にとってどれだけ貴重だったか気づく。涙が出そうになって、ぎゅっと唇を噛み締めた。
「そういえばさあ、奏太最近おかしくない?」
教卓の目の前の席にいる竹内さんが、隣の桃井さんに耳打ちしているのが聞こえてきた。耳打ちと言っても竹内さんの声はいつも響く。
「あー、おかしいよね。なんかオンナ? みんな切ってるって」
「そうそう! 隣のクラスの早希ちゃん? あの学年ナンバーワンの超可愛いコも切られたみたい。泣きながら奏太の頬、引っ叩いていたの、あいちゃんがみたって」
「それ聞いた聞いた。マジビックリしたよね」
そのあとも、何組のナニナニちゃんも振られたとか、そんな話をしていたけれど、もう耳にはいってこなかった。
彼の事がいよいよわからなくなってくる。
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