side:Miku

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職員室にちゃんと来てくれたのに、いきなり踵を返して帰ってしまったことも。そのあと私と全く目を合わせてくれないことも。 わかりそうで、わからない。もどかしくて苦しいのに、どうしてだろう。泣きたくなるような切なさに微かに混じる甘さ。 とにかく、このまま彼から逃げていたらいけない。そのことだけはよくわかる。 ただ寺島くんは、学校では絶対に話をしてくれない。それなら方法はひとつ。 業務を早めに片付けて、学校を出る。駅の前まできてから、立ち止まって携帯をとりだす。 trattoria Tera  電話帳に登録してあった寺島くんのお家でやっているお店の電話番号。今の時間ならまだ、お客さんはそれほどいないはず。 しばらく眺めていたけれど、思い切って震える指先で通話ボタンを押した。
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