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side :Miku
寺島くんの指先がわたしの耳たぶをちょい、と摘まんだからびっくりして大袈裟に身じろぎしてしまった。
「な、な、なに?!」
わたしの反応に、彼がぶっと吹き出した。
「ごめんね。耳たぶ、すげーぷにっとしてるから、つい。いわれるでしょ?」
確かにわたしの耳たぶはふっくらした福耳。よく触ってみたいとも言われる。だからといって、生徒に勝手に摘まれても困る。
また触られないよう用心しつつ、後ろに一歩下がる。
「どうせわたしの耳たぶはぷっくりしてますよ。生まれつきなんです」
挑むようにいったのに、自分でぷっくり とかいってるし、と笑われた。それからわたしの耳をじっと見るから落ち着かなくなる。
なんともいえない間を、寺島くんがあっけなく破った。
「あ、そういえば。みくセンセイ、なんかさがしてなかった?」
その言葉に、教室にきた理由をはっと思い出した。
「そうだ! 寺島くん、日直でしょう? 日直日誌はどうしたの?」
彼はああと笑って、自分の席を振り返った。
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