八 唐木市機密資料集

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 俺は抱っこしている香澄を取り落としそうになった。 「まさか、どうしてパラレルワールドだと分かるんです?」 すると副館長の方が言った。 「男性がこちらの世界に戻ってきて数日で、肺炎を発症しました。そして彼はそのまま亡くなっています。男性は高齢で、恐らく向こうの世界の有害物質にやられたのでしょう」  ふいに室内に煙が発生する。まるで火事の家の中にいるようだ。館長はそんなことには構わず続ける。 「もう一人、パラレルワールドに行った者がいます。こちらは若い女性で、男性と同じように、悩みを抱えたまま眠りにつきました。そしてふと目を開けると、病院にいました。女性は真っ白なベッドで寝かされ、腕には謎の管が刺されていたらしいです」  美智代が怯えたように腕を触った。病院で本以外の道具を使うなど、聞いたことがない。ましてや体に道具を装着させるなんて、人体改造でもするのでない限り考えられない。 「女性はその後もその世界で、様々な不思議な体験をして帰ってきたとのことです」 館長がそう言いって本を閉じると、周りはもとの本棚だらけの部屋へと戻った。 「さて、ここまでの話を参考に、我々はある説を導き出しました。それに関し ては青山君が担当しており、図書委員の中では一番詳しいでしょう」  すると青山が一歩前へ出て口を開いた。 「私が説明しましょう。その説とは、『パラレルワールド術力干渉説』です」
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