九 パラレルワールド術力干渉説

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 俺はそれが何を意味するかはさっぱり分からなかったが、秀一は何かを悟ったような顔をして言った。 「パラレルワールドの本が減れば、その分余った力がこっちの世界の本に……」 「そうです。そしてその影響を受けやすいのが、本に没頭し過ぎてしまうタイプの人です。これはまだ精神の幼い子どもに多いです。秀一くんの場合も、本に没頭するがあまり、ただでさえ強力になった本の力を引き出し過ぎてしまうのです。我々が秀一くんや香澄ちゃんを研究したかったのは、本に夢中になった状態の脳のデータが欲しかったからでした」  青山はいかにも残念そうに言う。俺は、本の力とやらが強くなりすぎたというのは理解できた。それとパラレルワールドとの繋がりも、なんとなくわかった気がする。要するに天秤みたいなものだろう。 「パラレルワールドの本が減ってるって、それじゃあ、どうすればいいんんです?」 美智代が不安そうに訊いた。 「今のところどうしようもありません。ただこの事実が解決の鍵を握っているような気はします」  館長は真っ直ぐな目で俺達を見た。しかし俺は頭の中で、なぜか全く別のことを考えていた。そして気がつけば、俺はその考えを口に出していた。 「その世界では、読書念術は存在しないという話でしたね。でも本が存在しないというわけではない。ということは、作家は読書念術に縛られることなく、作家の思うがままに本を書けるのでしょうか。もしそうだとすれば、少なくともこんな事態が起こるくらい本の数が減ることはないと思うのですが」
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