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「本が減った代わりに、電子書籍っていうものが出てきたんだ。紙に書くんじゃなくて、インターネットってのがあって……分かる?」
俺は即座に館長の方を見た。館長は熱心にメモを取りながら、しきりに頷いていた。俺はとりあえず、頑張って聞いてみることにした。
「文芸雑誌なんかを読んでる人なんてほとんど見かけない。やっぱりスマホが出てきたから、本の需要がなくなってるのかもね」
スマホとかいうものに、本が負けているということか。俺は思わずうつむいていた。そんな俺を見て、この世界の俺はゆっくりと言った。
「何度も言うけど、小説自体が廃れてるってわけじゃないよ。例えばスマホなら、素人でも簡単に小説が書けたりする『アプリ』もあるからな……。」
俺はやっぱり意味が分からず、首を傾げた。すると、科学文明の俺は慌てた様子で話を戻す。
「おっと、話が逸れた。読書念術については、心配することはない。俺たちが頑張って行くからさ。もっと本の良さを、小説の良さを、皆に分かってもらわないとな」
俺は顔を上げた。
「そうですね。そのためにはまず、この『読書文明人の侵略』を成功させないと」
錦さんも明るく言った。再び館長の方を見ると、今までで一番の笑顔を見せていた。俺は感動で涙が溢れそうになりながら、それを誤魔化すような大きな声で言った。
「この世界の俺なら大丈夫ですよ。天才、大沢なら!」
部屋に笑い声が響いた。
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