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「そんなこと言ったって、話を終わらせようにもこのシリーズまだ完結してないし、メラゾーマドラゴンは主人公の仲間で、ずっと登場しっぱなしなんだよ」
秀一は相変わらずやる気のなさそうな声で言う。俺が苛々し始めたとき、一階から美智代と香澄が不機嫌そうな顔でやってきた。
「何してんのよ、さっさと寝なさいよ二人とも」
美智代はそこまで言ったあと、俺と同じように絶叫した。
「全く、頼りない両親だね」
秀一が呑気に言う。香澄は香澄で、珍しい生き物を見れてはしゃいでいるようだ。
再びドラゴンが雄叫びを上げる。俺と美智代は絶叫し、秀一と香澄は笑う。いよいよ収集がつかなくなってきたところで、秀一が突然声を上げた。
「そうだ、いいこと思いついた!」
すると彼はドラゴンの巣となった部屋へと飛び込んでいった。しばらくすると、先程持っていた本より一回り大きな本を持ってきた。そしてページをめくると、ドラゴンの方へ振り返る。そのままドラゴンと向かい合わせになった状態が数秒続いたとあと、突然ドラゴンが小さな粉末になりはじめた。
秀一の持っている本は、『高校化学基礎』だった。もう一度ドラゴンをよく見ると、だんだん燃え尽きて灰になっているようにも見える。
「はいはい、これでいいでしょ?おやすみー」
そう言ったきり、秀一は部屋の扉を閉めた。とりあえずおやすみ、と返して、俺は書斎に戻っていく。美智代も香澄を抱きかかえながら一階に戻っていったようだ。
俺は再びベッドで横になった。しかし、もう夢の世界に戻ることは出来なかった。不必要に脳に刺激を与えてしまったらしい。次から次へとどうでもいいことが思い浮かんでは消えていく。
どうせ眠れないなら執筆作業に戻ってもいいが、そんな気分でもない。俺はただ無意味に寝返りをうちながら、夜が明けるのを待った。
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