七 唐木市中央図書館

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七 唐木市中央図書館

 俺と香澄は、穴の被害を受けた道を避け、かなりの遠回りをして中央図書館へ到着した。そこには既に大勢の人々が集まっていた。彼らは本棚に囲まれたメインホールを避難所代わりにしているようで、毛布を敷いたり仕切りを作ったりしているものの、ぎゅうぎゅう詰めになっていた。  おかげで図書館の関係者を探すのに、十分近くの時間を要した。そしてようやく見つけたのが、ここの図書委員だという、青山という人物だった。 「ああ、大沢さんですか。ここでは少し話がしづらいので、場所を変えましょう。三階の会議室に案内します」  青山はそう言うと、奥のエレベーターに向かった。俺は香澄を抱っこしながら彼についていった。  三階はメインホールとは違い、図書館というより書庫といった感じだった。青山に訊くと、どうやら三階は関係者だけが立ち入れる階らしい。  会議室はしばらく廊下を歩くとすぐに着いた。青山がその扉をノックして、部屋に入った。俺も続いて中に入った。  そこにはスーツを着た大柄の男と、秀一がいた。秀一は視線を落として黙っている。机の上には本が置いてある。それは例の『転生したらドラゴンの王国の勇者だった件』だった。 「大沢さんですね。私はこの図書館の副館長の乃木坂といいます。とりあえず、座ってください」  乃木坂と名乗る男が穏やかな口調で言うと、青山はすばやく秀一の隣の椅子を引いた。俺は小さく頭を下げると、その椅子に座って香澄を膝の上に置いた。香澄は不安そうな目でこちらを見上げてくる。 「それで、これは一体どういうことなんでしょうか?」  本当は聞きたいことは山ほどあったが、俺自身まだ頭の整理がついていなかった。乃木坂は唇を舐めると、ゆっくりと口を開いた。 「まず、あなたにとって最も大事なことを話しましょう。あなたの子供さんは、図書研究施設に送られることになります」
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