九 パラレルワールド術力干渉説

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九 パラレルワールド術力干渉説

「我々の間では『reading-magic interference 』略してRMI説と呼んでいます。この説では、我々が普段使っている読書念術は、本自体に眠っている能力によるものだと考えます。つまり、我々はあくまでその力をほんの少し引き出しているだけなのです」  最初の良くわからない造語が出てきたとき、俺は理解するのを諦めようとした。だが、秀一や美智代が真剣な顔で頷いているのを見て、俺はすぐになんとか話についていこうとした。 「そこで私は、その本が持つ力はどこから来ているのかという疑問を持ち、研究を始めました。その結果、本の力にパラレルワールドとの繋がりがあることを発見したのです」  図書館は読書念術の研究も行っているらしい。どんな研究をしたのかが気になったが、どうせ聞いても余計混乱するだけだろう。俺は黙って話の続きを聞いた。 「本の力というものは、パラレルワールドにある本の力と、ある一定の均衡を保つようにできています。パラレルワールドに行った者の体験談から考えるに、あちらの世界では読書念術というものは使われておらず、電気が主なエネルギー源となっています。これは、パラレルワールドの本の力は、人間が簡単に引き出せるレベルまで達していないということを意味します。我々の世界の本の方が、力が多く配分されているのでしょう」  俺と美智代が首を傾げていると、秀一が言った。 「じゃあ、今回の事件は、その配分が狂ったから起きているんですか?」 青木は大きく頷いて続けた。 「そう。本来ならばこちらの世界の本の力は、我々が少し念じるだけで力を引き出せるレベルの、微妙な力に調整されているわけです。しかしこの力の配分が狂ってしまっている。この原因として考えられることは一つです」 一瞬、書庫に重い空気が流れる。青木は拳を握りしめて、大きく息を吸った。 「あちらの世界、つまりパラレルワールドにある『本』が、数を減らしつつあるからです」 
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