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十 科学文明の唐木市中央図書館
目を開けると、青い空が見えた。よいしょ、という掛け声を上げて、俺はゆっくりと頭を起こした。どうやら今居る部屋は、さっきの地下室と同じものらしい。ただし、本棚は倒れ、本は散乱し、壁は一部剥がれ、天井に至っては丸ごと引っ剥がされている。
ふと隣を見ると、美智代が香澄を抱えて座り込んでいた。その隣には、秀一が仰向けに倒れている。
「あのあと、どうなった?ここはもうパラレルワールドか?」
俺が訊くと、美智代は少し間を空けてから言った。
「分からない。いま図書委員の人達が調べてるみたい」
美智代が見た方を見ると、確かに剥がれた壁のずっと向こうに、二、三人の人影が見える。俺は訊いてくる、と言って立ち上がり、リュックを背負い直すと、そちらに向かった。
壁に空いた穴を通り抜けると、そこはうってかわって綺麗な図書室だった。しかも中央図書館と全く同じ構造だ。だが、そこには部屋の奥の人影以外、人らしきものは見当たらない。さらに異常なくらい静かだ。俺はそんな不気味な図書室の通路を、早足で歩いていった。
「あ、大沢さん。気が付きましたか」
図書委員の男の一人がこちらを見て言った。だがその顔はあまり嬉しそうではない。俺は男に近づくと、まず一番訊きたいことを訊くことにした。
「一体、何が起こったんですか?無事にパラレルワールドに着いたのでしょうか」
男が黙っていると、隣にいた女が話しはじめた。
「一応、着いたようです。しかし、成功か失敗かで言えば失敗です。あれを見てください」
女は俺の向かって右側を指指した。そこにはまたもや壁に大きな穴が空いていて、ちょっとした窓のようになっていた。その向こうからは、何かざわめき声が聞こえる。俺はそこから顔を出してみた。
どうやらここは一階のようで、下を向くとすぐに地面が見えた。右は壁に遮られていて見えない。俺はさらに穴から上半身を出して、左の方を見た。
大勢の黒っぽい服を着た人々が、建物を囲んでいるようだ。彼らは皆、透明な盾を持っていた。そこには『POLICE』とあった。
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