十ニ 日本むかしばなし×日本妖怪図鑑

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十ニ 日本むかしばなし×日本妖怪図鑑

 すかさず美智代は、香澄を持ち上げて肩車した。そこから見える大量の人だかりは、香澄を怖がせるのに十分な効果を発揮した。 「ほら、桃太郎に助けて貰いな」  秀一が『日本むかしばなし』を香澄に手渡した。香澄は勢いよくそれをひったくると、折り目をつけてあるページを開いた。  館長が言うには、話に慣れていれば慣れているほど、スムーズに読書念術を発動できるとのことだ。複雑な作戦を、出来るだけ噛み砕いて香澄に理解させるのには苦労した。  香澄にとって、完全武装状態の警官を鬼に見立てるのは容易だったらしい。頭上から雉らしき鳥が飛んでくると同時に、犬と猿を従えた桃太郎が現れた。桃太郎は刀を振り上げて、臆することなく警官隊に突っ込んだ。  それを見た図書委員は、続けて読書念術を使う。彼らが持っていた本は、『日本妖怪図鑑』だった。これらはこちらの世界の図書館で見つけたものらしい。シリーズものらしく、ちょうど1〜10まである。  桃太郎の背後に、唐傘お化けが現れた。さらにろくろ首、一つ目小僧、天狗、大入道などが次々に登場し、あっという間に、目の前がファンタジーな空間になってしまった。  最後の仕上げは美智代の役目だ。美智代は普段香澄に読み聞かせている『きょうのようちえん』を開いた。
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