シーン59

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ーーお姉ちゃんの好きなプリン買ってきて冷蔵庫入れてるから。帰ってきたら食べていいよ。 ーーありがと… フミはよく気の利く優しい妹だった。喧嘩もしたことなかった。 ーーお姉ちゃんはパパみたいな刑事になるんだよね。 ーーフミはどうすんの?まだ中学生だから考えてないか? ーーアタシ?アタシはね、保母さん。 子供が好きで誰からも好かれていたフミ…。 ーーアーちゃん…今度彼氏も一緒にご飯食べに連れて来たら? ーーお姉ちゃんの初彼見たーい! ーー初彼とか言うな! ーーでもホントのことじゃん。連れておいでよ、ねっ!あんなイケメンの彼氏なんて羨まし過ぎ!生イケメン見たい! ーー史子… ーーなーに? ーーアンタ…アーちゃんの彼氏見たことあんの? ーー写メだけね。 あの日までは…誰からも羨まれる程の家族の団欒があったはずなのに。 あの男のせいで家族の全てが掻き消され、そしてアタシの前から消えてなくなった。 そうーーーーーー フミとお母さんが自殺したあの日から…アタシには復讐以外には何も残されていない。 あの男を殺して…アタシもみんなのとこへ行く。それだけがアタシに残された『生きる意味』になった。 ーー彩芽…お前だけは幸せになれな。俺のことなんか忘れてさ… ーーそんなこと…なんでいきなり言い出すのよ!? ーー意味わかんない! あの父親の不倫報道が出る前の日、突然別れを切り出して来たロク。 あの日のロクは普通じゃなかった。狂気に包まれていた。アタシでさえも震えるほどのーーーー 狂気を全身に纏っていた。 ーーそんなこといきなり過ぎじゃん!ちゃんと訳話してよ!じゃないと分かんない! ーーねえ! ーーねえってば!ロク! 何度聞いても答えてはくれなかったロク。 アタシを一度も見ることなく バイクにまたがり走り去ったロク。
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