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シーン60
彩芽以外の神童班がいつものバーの一番奥の薄暗い個室に集まっていた。
「でもな…班長も普通の人間で安心したな」
「吉さんは普通じゃないって思ってたんすか?」
「馬鹿か、お前だって言ってただろうが、班長がたまに怖くなるって」
「班長にあんな過去があったなんてね…」
「アイスドールになるわけが分かる気がするな」
「班長が犯人を異常なまでに憎むの…」
「少しは分かったっすね」
「弥永のオッチャン!オッチャン!何隅っこで不貞腐れて飲んでんのよ!」
壁に寄りかかるようにして飲んでいた弥永は右手の甲を目の上に当て下から覗き込む。
「風香…お前よくそんなに能天気でいられるな」
「何がよ?」
「班長は次長を殺そうとしてんだぞ。分かってんのか?刑事が殺人だぞ。その片棒を担がされんだぞ俺たち」
「弥永さん、抜けたいなら抜けてイイっすよ。例え俺一人でも班長支えて行きますから」
「そんなこと言ってないだろうが!」
大声で言うのと同時に激しく丸い浅底のグラスをテーブルに叩きつける。
「一緒じゃないっすか!」
タスクも熱くなり目を潤ませ睨んだ。
「まあまあ熱くなるなぅて」
間にいた吉永が落ち着かせようとするが一度熱くなった男たちは収まる気配は無いように見えた。
「何も思わねえのかよ!刑事だぞ、俺ら」
「刑事である前に人間なんじゃないの?」
一枚岩だった神童班の歯車が微妙なズレのまま夜は更けていく。
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