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シーン46
彩芽が次長室を出ると鳴り出すスマホ。それはタスクから。
廊下で立ち止まると一点を凝視したまま、彩芽が電話に出るとタスクは露骨に慌てた様子で声をうわずらせていた。
「班長!さ…さ…」
「何よ、はっきり言いな」
「三枝…が」
「三枝順次が何?」
「殺されました!」
心の中に溜まった疑念を吐き出すかのような息をした後、気持ちを切り替え
「やっぱりね…」
と呟く。
「場所は?」
「新宿の中央公園です」
「了解、直ぐ行く」
「吉さんも弥永主任も今向かってます」
ーー三枝順次は新宿中央公園の池のそばにある雑木林の中に銃で撃たれ、昨夜の雨でできたらしい水溜りにうつ伏せの姿勢で死んでいた。
「あ、班長」
「吉さん、状況は?」
「背後の至近距離から三発撃たれ即死みたいです」
「至近距離…」
「班長、さっきの電話で言った『やっぱり』って?」
「次長の話ぶりからもしかしたら…って思ったから」
「次長は何てですか?」
「月島管理官の件には首突っ込むなって」
そこに本庁の刑事たちがやって来た。
「あらあら所轄は資料整理じゃないんですか?アイスドールのお姉ちゃん達は」
「親父さんみたいに死にたくなかったら鳥籠の中で静かにしとけよ」
その刑事の言葉を無視して歩き始めた彩芽。
「行くよ」
「そうですね、さあてと資料溜まってんのかなあ。本店の方がさぞかしいっぱい掴んでるんでしょうから。ね、班長」
タスクが放った精一杯の皮肉だった。
「いいか!所轄は大人しく籠の中で仕事してりゃあいいんだよ!」
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