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第4話 新たな失踪事件の闇、そして三枝の野望 シーン48
月島管理官・三枝順次殺害事件が起こって4日後、三枝順次の組織と対立していた神龍会の末端のチンピラが自首してきたことで事件は解決となった。
それでも神童班は三枝の行動を含め、まだこの事件を追っていた。時は、最初の『少年少女大量失踪事件』から3ヶ月、すでに夏も終わった9月の下旬。だというのに残暑が厳しい日が続いた。
ーー上辺だけのお決まりの手打ちに納得いくわけもない。
しかし依然として犬鳴村の所在は何一つ掴めないでいた。
「もしもし班長?」
「奴動いた?風香」
「奴は今、警察庁を出て静岡方面に向かっています」
「了解、タスク!静岡方面に行って。それと風香、そのGPSデータ、こっちのPCに転送して」
「了解です!」
「でも…班長、気を付けて下さいね。奴らの罠かも」
「大丈夫。ありがとう」
彩芽が次長に呼び出された時、次長のバッグの底にGPS発信機を仕込んでいたのだ。
「次長、とうとう動きましたね」
「無駄口叩かんと急ぎ!」
「了解っす」
首都高に乗ってすぐタスクの携帯が鳴り出した。
「もしもし」
「班長は?」
「いますよ。班長、吉さんっす」
「吉さん、何か分かった?」
「三枝順次の方はまだ進展ないですが、月島管理官のことで妙な情報が」
「管理官の?何?」
「民生党のニューリーダーとか言われてる鮫島俊介知ってます?」
『民生党』とは現在の与党で、衆参両議院で2/3以上を擁し如何なる法律でも政策でも可能にできる状態にあった巨大与党。3期目になる『後藤田』総理のもと秋に消費増税を控え徐々に支持率を落とし始めてはいたが、それでも非難を繰り返すだけの野党に勝ち目などはない状態。
「あー…国家機密情報保護法ってヤバい法律を通そうとしてる奴」
「そいつ、警察官僚出身じゃ?」
「そうです。その平成の治安維持法って他の政治家からバッシングされてる法律を次長が鮫島を使って法制化しようとしてるらしいんです」
「それで?」
「その鮫島にここ数年で急成長してるハイパーメディアシティから何十億ってお金が流れてるらしいです」
「何?そのハイパー何とかって」
「フェイスボックスって知ってます?」
「SNSの?」
「そうです」
「そのSNSを通して国民の情報を警察が自由にできるって法律を作ろうとしてるらしいです。上辺じゃ国の機密を護る為とか言ってますけど、全ての国民に背番号をつけてあらゆる面で統制するつもりです。日本の中国化ですね」
「自分達だけが美味しい汁を吸うってことか。ホントヤクザ以下」
「その鮫島と次長が繋がってるってこと?」
「そうです。それを裏で探ってたのが管理官らしいんです」
「国民総背番号制でしくじったから今度はそれってことか…諦めの悪い奴ら」
「今どこですか?班長は」
「静岡方面に向かってる」
「次長、動いたんですね」
「そう。尻尾出してくれるといいんだけど」
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