悪人たちよ、震えて眠れ《完結篇》ーーー『犬鳴村』30 years later

シーン51

ーー富士青木ヶ原樹海(ふじあおきがはらじゅかい)

車がやっと通るだけの小道から700メートル位のところに男が指示した山小屋はある。

10年前のあの日、秘密公安組織『ゼロ』が解体されることが決定された直接のきっかけは、当時の中国の最高国家主席であった潘文政が暗殺されたことだった。

余りに強引な手法に嫌気がさした軍部の穏健派によるクーデター。

それにより海外の国、特に中国からの脅威がなくなり、『ゼロ』もその存在価値を失った。

ところが日本を自分達の意のままに動かそうとしていた元首相の桜庭源三が三枝や鮫島俊介ら公安警察、政治家や一部の財界人を取り込み、資本主義の下の共産化国家を目論み秘密裏に『ゼロ』を進化させていった。

それを知らされた彩芽の父、神童浩一郎ら数人の『ゼロ』メンバーがこのことをマスコミにリークしようとしたのだった。

ーー文秋さんか、ちょっと記事にして欲しいことがあるんやけど…

ーーああ…金はいつもの海外の口座に振り込ませるから。