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と同時に意識も霞んでいった。
「ここよ」
という彼女の声で意識を取り戻した。
「ここは?」
「犬鳴村」
「いぬなきむら?」
「そう。アタシが産まれ育ったとこ」
そこはどう見ても村には見えなかった。ゴツゴツした灰色の岩肌に周囲を囲まれた洞窟かトンネルといったようにしか見えなかった。
何処からか吹いてくる生暖かい風で運ばれてくる空気はどういう訳か血の匂いがした。
「これが村?」と聞き返すと少女は「そうだよ。ここはね…人の命を奪ったくせに、自分の罪を償いもせず、反省もしない奴らを処刑する…そんな村」と顔を曇らせた。
「こっち」
少女は俺の手をとり、微かに灯りが差し込む方に歩き出す。
しばらくその洞窟のような空間を進むと、そこには確かに村といった雰囲気の昭和の山村にあった木造の長屋がいくつもあり、木々や草花が鬱蒼と茂る野山に出た。
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