シーン54

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シーン54

ほぼ時間通りに三枝を乗せた黒塗りの高級車が山小屋から700メートルのところに乗り付けられた。 ーー来たか… 車から三枝が一人で降りゆっくりと歩いて来るのを村の中のモニターで見ていた。 「待ってたぞ、三枝」 「どこだ神童?」 「山小屋の奥のテーブルで待ってる」 「分かった」 「三枝」 「なんだ?」 「史子を嵌めて自殺に追い込んだのもお前だよな」 「フミちゃんやったのは野村ってガキだろ。どうして俺が」 「嘘つくな!野村ってガキを使って史子を…」 「そんなわけあるか」 「そんなことより着いたぞ」 三枝が山小屋のドアの前に立つと更に指示を続けた。 「ゆっくりドアを開けろ。変な真似だけはするなよ」 男が指示された通りゆっくりと山小屋のドアを開けると爆音と共に山小屋は粉々に吹き飛ばされた。 それと同時に電話も切れた。 しかしその状況を車の中で一部始終を見ていた男は爆破されたはずの三枝だった。 黒いカーテン越しにその光景を見ていた三枝は鼻で嘲笑うと ーーそんな子供騙しの罠にかかるわけないだろ。相変わらず甘いな、神童。 と独り言のように呟いて車を出させた。 犠牲になったのは用意していた影武者。
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