190人が本棚に入れています
本棚に追加
ーー今はまだ金ねえから1000円の安物だけど、いつかちゃんとしたの買うから今はこれで我慢してな。
ーー別にこれでいい。ロクがいるだけでアタシは…それだけが嬉しいんだから
「アタシはロクのプロポーズを迷うことなく受けた」
「そのネックレスに付けてるのがそれっすか?」
「そう」
そこまで話すと急に曇る顔。
「でもその年の夏、全てが一変した」
まだ照りつける日差しが眩しい夏のある日の昼過ぎ、アタシが駅を出た時、慌てて走って来たロクと鉢合わせした。
ーー何?どうしたの!?そんな慌てて。
ロクの目は尋常じゃなく、小刻みに唇を震わせていた。
ーー空が…
ーー空くんがどうしたの?
それにも返事することなく走って電車に飛び乗ったロク。顔は真っ青で…何一つ話すことも無かった。
「ロクには6歳下の弟の空くんがいて二人暮らしだった」
「ロクが10歳、空くんが4歳の時、両親を物盗りに殺された。偶然親戚の家に泊まっていた二人は助かったんだけど…」
「それからは親戚の家をたらい回しにされ…」
「どこにも居場所がなくなった二人は施設に入れられた」
「ロクがまだ13歳の時」
「大学に入ってからは施設を出てアパートで暮らし始めた。ちょうどその頃、ロクと出会った」
「空くんを育てるため朝から晩までバイトしてた」
「それなのに、その空くんが街中でヤンキーに絡まれ何回も何回も殴られ…それが元で二日後に死んだ」
最初のコメントを投稿しよう!