第5話 ブラックスワン、黒フードの男 シーン57

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ーー今はまだ金ねえから1000円の安物だけど、いつかちゃんとしたの買うから今はこれで我慢してな。 ーー別にこれでいい。ロクがいるだけでアタシは…それだけが嬉しいんだから 「アタシはロクのプロポーズを迷うことなく受けた」 「そのネックレスに付けてるのがそれっすか?」 「そう」 そこまで話すと急に曇る顔。 「でもその年の夏、全てが一変した」 まだ照りつける日差しが眩しい夏のある日の昼過ぎ、アタシが駅を出た時、慌てて走って来たロクと鉢合わせした。 ーー何?どうしたの!?そんな慌てて。 ロクの目は尋常じゃなく、小刻みに唇を震わせていた。 ーー空が… ーー空くんがどうしたの? それにも返事することなく走って電車に飛び乗ったロク。顔は真っ青で…何一つ話すことも無かった。 「ロクには6歳下の弟の空くんがいて二人暮らしだった」 「ロクが10歳、空くんが4歳の時、両親を物盗りに殺された。偶然親戚の家に泊まっていた二人は助かったんだけど…」 「それからは親戚の家をたらい回しにされ…」 「どこにも居場所がなくなった二人は施設に入れられた」 「ロクがまだ13歳の時」 「大学に入ってからは施設を出てアパートで暮らし始めた。ちょうどその頃、ロクと出会った」 「空くんを育てるため朝から晩までバイトしてた」 「それなのに、その空くんが街中でヤンキーに絡まれ何回も何回も殴られ…それが元で二日後に死んだ」
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