小さな卵

12/12
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「フエン、フエエエン」 ヒヨコじみた黄色のベビー服を纏った赤ん坊は小さな体に反して大音量で泣き続ける。 「私もちょっと抱っこしていい?」 駄目と言われたら、すぐ引き下がろう。 自分の中で保険を掛けながら切り出した。 「大丈夫?」 母は意外にも腕の中の赤子を差し出す風に寄ってくる。 泣き喚く孫をさすがに持て余し気味だったのかもしれない。 「ほら、伯母(おば)ちゃんだよー」 まだ髪も疎らな小さい頭と薄いベビー服に覆われた小さな体を支えるようにして抱きかかえる。 「ウエエエエン」 レナータよりもう少し重く大きな体だが、やはり乳臭い、甘い匂いがして、抱いた両腕には温もりが伝わってきた。 「すぐにママは来るからねー」 私の赤ちゃんはどこに行ってしまったんだろう。 ブラに覆われた乳首にまたひやりと滲み出る感覚がして、胸の奥から見えない血がまた新たに流れ出す。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!