水辺の家族

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水辺の家族

「今年はね、白鳥が来るの、遅かったの」 デジカメを手にした母が深い皺の刻まれた笑顔で示す。 ほっそりと長い頸を誇るように伸ばした白鳥、灰色の雛、緑色の頸に焦げ茶色の羽の鴨。 一羽が来て、また一羽が去ることを繰り返しつつ、一群となって水辺に漂っている。 父が埋められた山の墓地近くを流れるこの川の冬の風物詩だ。 「今年はちょっと来た数も少ないね」 隣で紗羽が呟く。 抱っこ紐の胸では白いケープに包まれた翔くんが安らかな寝顔を見せていた。 息する度にケープのフードに付いた白い天使の羽を模した飾りが微かに揺れる。 「こっちも昔より暖冬になってるからなあ」 孝さんもスマホのカメラの画面をズームで調節しつつ語った。 白鳥たちにとってこの土地はもう目指すべき場所では無くなってきているのだろうか。 バサッ! 切り裂くのに似た音を立ててまた一羽の白鳥が青空に飛び発つ。
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