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春の声
――ホォーオ、ホケキョ!
力一杯溜めてから吐き出した風な鳴き声が葉桜になったばかりの公園の植樹から響き渡る。
砂場で赤いシャベルを動かしていた翔の小さな頭が振り返った。
「ポッポォ?」
大きく見開いた眼差しをこちらに向けて尋ねる。
「あれは鶯だよ」
――ホーホロホロホロホケキョ!
青緑の揺れる影からまた別な一羽の囀ずる声がした。
「鶯さん同士でお話してるのかなあ?」
「カナア!」
私が小首を傾げると、翔も目を細めて真似る風に首を傾ける。
あれからもう二年が過ぎて、この子ももう二歳と二ヶ月だ。
私はふっと息を吐いてまた吸い込む。
アスファルトの匂いに花と緑の甘い香りが色濃く混ざっている。まがうことなき春の空気だ。
見上げれば、薄青の空に千切った綿じみた雲が通り過ぎていく。
冬よりもどこか低く迫ってきたような晴れ空と雲だ。
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