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素材売り場に向かって歩いていると、小さいドワーフさん達や、自分と同じ種族の人で活気に溢れていた。
ドワーフの女性の人はドワーフの男性よりも少し大きく、丸鼻が特徴的だった。
それに、よく見るファンタジー系統の簡単な布の服と皮の靴、皮の靴と言っても、サボ靴と言っていい可愛い物だ。
人族の人達は、オームさんがバカでかいだけだったらしく、平均、170cm辺りの背の高さで、オームさんは…190cmはあるんだろう。
皮の装備をする人は、どうやら、戦士らしく、立派な武器と盾がしっかり備わっていた。
ドワーフの男性が主に兜まで被っている。
それに、ここの人族の女性のスタイルがとても良い、いや、ドワーフの女性の方も、すらっとしているのだ。
それに、売っている物も、形が面白くて、常に俺はあちらこちらを顔を向けてしまって、オームさんに笑われていた。
そのオームさん、気さくに色んな人に挨拶をかけられていた。
「お、オームの旦那!無事帰ってきたな!」
「オーム!顔出し後で頼むよ!」
「お帰りなさい!オームさん!」
「かっはっはっはっ、後でな!今は、客人案内しているからよ!」
手を振り、気さくに笑い返すオームさんの人柄の良さとリーダーと言われる理由も、ほんの少し、分かった気がした。
その流れで、俺の方にも、視線を向けられて目が泳ぐ。
けど、お辞儀をしようと立ち止まったら、ひょいとオームさんに担がれて。
「なっ!」
「ちゃんと、挨拶の場は作ってやるから、先ずは、ギウサの所な。」
「あわわ…分かったから!」
オームさんの背中をペちペち叩くも、ビクともしないで、担がれたまま、俺は酷く目立ちながら、素材売り場まで連れていかれたのだった。
露店から、少し離れて左側の扉に近づく。オームさんが少し前かがみになって開けて中に入った。
「おい、ギウサ、ジンが起きたぞ。」
その言葉と共に、俺はオームさんに下ろされた。
次の瞬間、ふんわり柔らかい白い身体が、俺に抱きついてきた。
物凄く、泣き声で。
「ふぇぇえええ!良かったサァー!」
「し、師匠…。」
それからの、ギウサ師匠は、何故か、俺に必死に謝ってきたので、俺も自分の不甲斐なさと気絶してしまった事を謝り、何とか宥めて、ギウサ師匠は、俺から離れてくれた。
ふと、そのお店の中を見ると、色んな種類の皮や鉱石、羽、植物、翼、色々な物が所狭しと壁や棚に並べられていて、ちゃんとガラス瓶にも入っている。
興味ありげに見つめていたら、カウンターに居る人族のおじさんが。
「ん?ここじゃ、見ない色の子供だな。」
俺に話しかけてくれて、俺も其方に向き、さっきとは違うだろうと思いつつ、軽くお辞儀をし。
「はじっめまして、ジンです。今年から、ドワーフさん達の集落で、修行させて貰い、ます。宜しくお願いします!」
少し、噛んだところがあるが、自分から挨拶をした。
「あー、そうだったか。ははは、俺は、素材売りのシーマだ。魔物とかの皮なら、俺の所で売ってくれ、これから、宜しく。」
「はい!」
俺が元気よく、返すと3人の笑い声が響き。
「ここでの素材は、茸や加工してない薬草が売れるのサ、お肉とかの食べれそうな食材は、料理ギルドで売りに行くのサ。」
「料理ギルド?」
「食材専門に取り扱うギルドサ、戦闘力がない人でも畜産や海鮮物、農業でもお金が稼げる場所サ。冒険者ギルド内に隣に絶対ある場所でもあるのサ。料理ギルドでモンスターを解体して、素材にして貰う事も出来るんだサ。」
「へぇ、面白いなぁ。」
「ジン、取り敢えず、持ってきた荷物で、素材って思い浮かべながら、物を出してみるといいサ。出す所は、このカウンターの上サ。」
師匠に言われて、素材の文字を頭の中で浮かべると、その文字が頭の中で変化し、色のついた映像が浮かび上がる。
これは凄いと確信しながら、片手をそっと前に出して。
「オープンゲート。」
自然に出た言葉だった。
次の瞬間、小さい魔法陣がカウンターの上に出来ると、ボトボトボトと集めた素材になる物がちゃんと仕分けられて出てきた。
全て出ると映像も消えて、魔法陣も消えた。
俺は手を下ろす。
「ほぉ、凄い子供だ。」
「ふはは、だろうだろう?この計り知れない力と破壊力のある可愛いやっこで、俺のお気に入りに入ってんだ。」
「オームのお気に入り!?そりゃ、大変だ。ちゃんとジンが、成人になるまでは手を出すんじゃねぇぞ。お前は、すーぐちょっかいかけるんだ。」
「い、良いじゃねぇか…ちょっとくら」
オームさんが言いかけた言葉が、ギウサ師匠の素早い鍵使いで喉元に突き付けられて飲み込んでいた。
オームさん、懲りなさ過ぎる。
それに、ギウサ師匠、怖すぎる…。
もう、俺からの位置で、師匠の顔の表情が見えません…。
シーマさんは、そのやり取りを見て、苦笑いを浮かばせながら。
「オームが悪い。26歳にもなって、少しは落ち着きを持てよ。」
「26!!?オームさん、26歳!?もっと、上じゃ…」
「ジン、こいつは老け顔と言われるのサ。それを言われたくなくて、こうやって、だらしなーい事ばっかりしてるのサ。」
「ぎ、ギウサ〜、それを言うなよ〜。」
ある意味、まだ、その歳で良かったのかもしれない。
26歳よりも、上だったら……犯罪者、いや、もう、犯罪者だなぁと、じーっとした目でオームさんを見たら、後退りして、両手を上げて降参のポーズ。
やっとギウサ師匠も鍵を戻し、シーマさんは、鑑定をしてくれた。
「んじゃ、300ペインな?」
そう言って、袋に入った硬貨を渡してくれた。
師匠がこれを俺のお小遣いにしてくれるらしい。
嬉しくて、それを大事に抱えた。
「じゃ、まだ、登録は出来ないけども、冒険者ギルドに行くサ。」
ギウサ師匠の掛け声で、俺は頷き、シーマに別れを告げて、3人で冒険者ギルドに向かった。
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