ギルド初体験

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誰か…誰か助けてくれと俺は言いたい。 俺とギウサ師匠は、先程、絡んできた人族とドワーフのグループで酒盛りをしているテーブルに近付き、横並びに立っていたんだ。 師 匠の顔が、笑っているようで笑ってない。 しかも、オームさんも笑っているようで笑ってない。 ある意味、俺の中でトップに居る二人が、そんな状態なのに、気にした様子もない、にやにや顔で俺の方を見てきた。 そいつは、以下にも悪い顔で…人族だと思われる。 「おい、自己紹介しろよ?そのうさぎ野郎の奴隷だって?」 おい、三下野郎、止めてくれ。 周りも、くすくす笑いやがって。 っーか、この世界に奴隷制度あんのかって言いたいけども、俺は、少し、ひくついた笑顔で。 「…ジンです。ギウサ師匠の一番弟子のっ、ジンです。奴隷云々は、失礼じゃないですかねぇ。」 「は?一番弟子だって?こんな、得体の知れない白うさぎの化け物に、媚び売って…。」 「おい、ギルマン!俺の客人に、何、無礼な事を言いやがんだ!」 オームさんが、止めに入るも、全くもって、鼻で嘲笑う三下野郎は、ギルマンと言うらしい。 腰巾着共も、止めないし、女の戦士のその馬鹿にした顔も、もうね、自分がいた世界にもあったわ。 口と周りだけは立派って。 ギウサ師匠の表情が、徐々に変わり、俺に至っては、事なかれ主義だけども、曲がった事が大嫌いな女だった心が、男になった事で。 …我慢のタガが外れやすくなってしまった。 だって、ギルマンの次の言葉は。 「客?ドワーフでもねぇ、その他種族でも、こんな種族見たことねぇんだ、ヘラヘラと笑って、何考えてんだか分からねぇんだよ!ガキ連れて食うんだろう?怪物!」 だとよ。それ聞いてプッツンだ。 「…なんだ、さっきから黙っていれば好き放題、師匠の事を言いやがってよ。」 思いっきり、俺は目の前のテーブル思いっきり叩いた。 物凄い音が響き、ギルマン共が黙った。 叩いた手から、ふしゅ〜…と煙が上がる。 目が痛くなるほどに、俺は相手を睨みつけて。 「俺の事は何言おうが、構わねぇが、命の恩人で、右も左も分からねぇ身元もはっきりしない餓鬼の世話を、文句の1つも言わねぇ心の血が通った師匠の悪口は許さねぇよ!ギルマンって言ったな?宣言してやる。俺は、お前を倒す。4週間だ、4週間で、お前を俺はぶっ飛ばす!覚えておけ!」 ふーふーしながら一気に捲し立てるし、ギルマに宣言すると、キッとオームさんを睨みつけて。 「オームさん!俺を鍛えてくれ、この男の長っ鼻へし折りたい!」 「この餓鬼っ!舐めた事言いやがって!」 ギルマンの野郎が、椅子から立ち上がり俺の胸倉を掴んだと思ったら、音もなく、ギウサ師匠が俺とギルマンの間に立ってて、ギルマンの手首を掴んだんだ。 「……抑えろよ…ギルマン。」 「あがっ!?いっ!」 「キミはだいぶ酒が回ってる。その酒が抜けるのは、丁度、4週間後サ。本来だったら、ボクがキミを…の筈なんだけどサ、ボクの弟子はとても優秀でね。」 淡々とした口調で、言うも、その可愛い手は、どんどん力がこもっているらしく遂に、ギルマンの手が俺の服から離れて、師匠とギルマンが向かい合わせとなった。 「このまま、へし折られて、ボクに食われるか、4週間後に、正々堂々、戦うか、選べよ?ほら。」 「あががががっ!ぐ、分かった!分かったから!離せ化け物!」 ギルマンが、そう叫ぶとギウサ師匠の手を思いっきり振り払い、師匠は、パッと手を離した。 ギルマンは、苦々しい顔をしながらその場を後にする。 腰巾着っぽい仲間も、それに続いてギルトをから出ていった。 そして、何故か、俺は、その場で腰が抜けて座り込み、そこから、師匠とオームさんが拍手し。 「やるじゃねぇか。ジン!」 「いやー、かっこよかったサぁ。こんな熱い弟子をもてて、ボクは幸せ者サ。」 この2人…何となく嵌められた気がしないでもないけども、少し、目元を潤ませて。 「…だって、許せなかったんだよぉ…」 泣きの声が出てしまう。 掌痛いし、もう、そんな声だ。 が、ギウサ師匠が俺を姫抱きをし、よしよしと俺をあやす。 もう、突っ込みは出来ないけども、師匠のもふもふをめっちゃしまくった。と、いい匂いがする。 食べ物のいい匂いだ。 「ほら!皆、ご飯だよ!ジン、ギルマンって奴は、オームよりかは弱いけど、戦士の男だよ。沢山、食って、アイツの鼻叩き潰してやんな!」 シーマさんが、ご飯を作って置いてくれたらしく、その匂いだった。 ギウサ師匠が、俺を抱えながら、そのテーブルに座らせてくれて、師匠もオームさんも座り、皆で、そのご飯を食べた。 並べられた料理は、鳥の丸焼き、ジャイアントブーのステーキ、茸と葉野菜のサラダ、ふわふわ卵焼き、なんと酒まで置いてくれたのだが、俺は飲めないので、果実のジュース。 久々の、お肉のジューシーな味わいと香辛料がとても美味しく、臭みもほぼなかった。 漫画みたいな料理もあったので、それは楽しく食事を済ませる事が出来たんだ。 それと、今後の予定で、2週間は、オームさんとマンツーマン荒修行、残り2週間を師匠とオームさんに次に強いドワーフと荒修行をすると決めた。 そして、俺達が泊まる部屋なんだが、空き部屋にギウサ師匠、何故か、俺は、ノームさんの部屋と強引に決められた。 師匠が不服そうな顔をするも、今回は仕方がないと了承したらしい。 …さて、4週間後、俺はどうなるんだろうと、ぽんぽんになった腹を撫でつつ、一生懸命、頑張ろうと心に決めた。
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