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猛特訓
初日に、色々とやらかした俺だが。
今は、ギルマンとの試合に向けて、オームさんに日々の手合わせに、ご飯をたっぷり食べて、身体を柔らかくする為の柔軟技を習っている最中なんだ。
オームさんいわく、肝心の筋肉が今一つ足りてなくて、それも増やす為に食べて、運動。
食べて運動を繰り返す。
特訓が始まった初日は、身体と脳のイメージの誤差が激しくて、そうそうにぶっ倒れるも気がついたら、夜でも特訓。
そして、たっぷり寝て、起きて、運動、そして食べる。ただのダイエットよりも、激しいんだが、満身創痍になるまで食らいついて食らいついてを繰り返す。
そうしていくと、一週間後には、筋肉痛は激しいものの身体と脳のイメージの誤差が無くなり始め、血豆も切り傷もあった手が、そこまで痛さを感じ無くなっていたんだ。
腕を上げる動作が、まだまだ筋肉とのお世話状態だった。
「ほら!ジン!もっと、限界まで頑張れ!」
「っは、はぁ…はぁ…はぁ…うぉおおおお!!」
「よぉし!そうだ!右!左!攻撃を受けて!返す!」
オームさんは、ウォーハンマーで俺の槍の攻撃を受けては、バランスを崩さないで避けて、直ぐに攻撃を返す術を教えてくれる。
そして、激しい打ち込みは、オームさんの手腕でいなされ、俺が力尽きるのがセオリーになっていた。
何せ、隙という隙が無い。
全身から、汗を滲ませて、俺は、前に倒れる。
言葉も出なくて、ひゅーひゅー、呼吸をして動けないのだ。
それを見るオームさんは、ふぅと息を吐き。
「一旦、休憩に入るか。ほら、ジン。」
そう言って、俺を横抱きで抱えて胡座をかくと、水分をゆっくりと飲ましてくれて、優しく俺の頭を撫でるんだ。
次第に、体力が戻って呼吸もいつも通りに戻ると、オームさんは、汗まみれの俺を濡れた布で丁寧に顔から腕から足先まで拭くのである。
…これば、1週間終わろうとするのに慣れない。
「……オームさん……そこまで、しなくてもいいのに…」
「これでも、お前さんの筋肉のつき方、確認している意味もあんだよ。変態ばかりが俺じゃねぇんだぞ。」
そう言われると、もう、任せるしかない。
綺麗な空、豊か自然、未知なる魔法、時々、魔物程度の認識は甘かった。
寧ろ、リアルサバイバルとは、この事。
けれど、このがむしゃらに頑張って、何かを達成しようとする感覚は…前の世界では、感じられなかった。
それに、こうやって、人と触れ合うという時間も。
前よりも…凄く心地好い。
やっと、俺は、オームさんの顔をマジマジと見て。
「…色々と教えて貰ったり、世話してくれてありがとうございますよ、オームさん。」
多分、今の俺の顔、凄く…自然な笑みだったかもしれない。
その俺の表情を見て、オームさんが、らしくもなく照れた笑みを浮かばせていたんだ。
「へっ、安くねぇぞ?お前が成人したら、自重しない大人の愛情ぶつけてやるからな?覚悟しとけ。」
「自重は…大事です。」
「今は、な。」
……何となく、頭の中の辞書で、柔道技を習っておこうと思った。
BLも確実にフラグたっているけども、先ずは生き残ったり…生き残ったりしないと、と、俺は心に誓った。
そして、これが、毎晩、続いていくので、次第に、この集落の人やガイさん、それに女性の人も増え始めてる。
温泉にも、毎日行くと、他に仲良くしてくれる大人や同い歳程の子供も増えた。
気さくに話しかけてくれたり、シーマさん夫婦も差し入れや、ご飯の提供も存分にしてくれて、より一層、人と人の何かの力を密かに感じる事が出来始めていた。
ギウサ師匠は、たまに見かけて声を掛けてくれるも、色々と忙しなく、何処かに行っていた。
場所は秘密と言って。少し、寂しく感じるものの、いつしかそれも忘れて、オームさんと、2週間の猛練習を終えた俺だった。
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