エピローグ

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何分位たっただろう。 光に包まれて気づいた時、視界に広がる光景に驚いた。私の目の前…上も下も横も何も無い。 ぽつんと私1人が居た。 手を伸ばして見ても何も無くて、漠然とした不安な気持ちが押し寄せてきて顔が歪む。 どうしよう、どうしよう、どうしよう… 疑問だらけになった時、目の前の空間が突如開き、その割れ目からよぼよぼのお爺さんが、ツルツルとした頭を輝かせて、白い布の…服と杖を持って現れて私にこう言った。 「ふぉふぉふぉふぉ、すまぬ。お主の名前は、確か…千鳥 菜穂 (ちどりなお)じゃったかな?」 私の名前を知っているお爺さんに話し掛けられて、言葉が出なかった私は、1度、こくりと頷いた。 「ふぉふぉふぉふぉ、いきなりこんな世界に呼び込んですまなかったのぉ。儂は、とある世界の管理をしておる、バーバム神じゃ。」 「ばー…ばむ神…様?せ、世界の管理?」 私の頭はますます混乱して、相手の名前と気になった単語の事を口にして黙ってしまう。 そんな私に、バーバム神様は、小さく微笑んで唐突に杖を振ると、途端に周りが一畳一間の和室に変わっていて、小さなちゃぶ台と座布団、それに向かい合わせで正座して座っている状況になった。 目の前にお茶請けの白いお煎餅と温かい緑色の飲み物が湯のみに入り、湯気を出して置いてある。 「先ずは、飲みなされ。少し、落ち着くだろう。」 「あ、はい。あ、りがとう、ございます…」 勧められるがままに、緑色の飲み物を手に取り、ふーふー冷ましてからゆっくりと1口飲む。…もう一口飲む。…あぁ、美味しい。 ただでさえ一重の目がほそーくなって思わず口元で、ニコッと笑える位に美味しい。これは、お茶だった。 「とても、美味しいお茶ですね。」 「だろう?儂の世界で採れる茶葉なんじゃ。」 改めて、お茶を見つめて、顔をバーバム神様に向けて 。 「バーバム神様は、私に何をお望みなんでしょうか?」 この美味しいお茶を飲んだら、1つの質問が浮かんだのでバーバム神様に聞いてみました。バーバム神様は、小さく頷き、私に。 「儂の世界で、存分に人生のやり直しをさせたいのじゃ。」 と、言いました。その時の私の顔は、とても驚いた表情になっていたと思います。 「やり直し?」 「そうじゃ、やり直しである。千鳥菜緒、主は、今の人生だと、明日の夜、見ず知らずの男にナイフで命を落とすのじゃ。」 「…え?」 「信じられないかもしれんがのぉ、主らの世界でよく起こる事件が、主に降り掛かるのじゃ。儂は、見ていて歯痒くてのぉ…なら、儂の世界にご招待してしまおうと思っての、お声を掛けさせて貰ったのじゃ。」 バーバム神様は、そう言うと杖を軽く短く数回振ると目と鼻の先に右側に青白い…漫画にある占いの館で有りそうな水晶の玉と、淡く暖かそうな光を放つ水晶の玉を浮かばせて、すっと私を見据えました。 「右の方の玉は…現代に帰れる方じゃ。左側は、儂の世界に‘ 転生’と言う形で移り住む事が出来る玉じゃ。…強制は出来ぬ故、ちょいとばかし急がせてしまう選択肢を主にさせてしまう。儂は、ただ、主に、今よりも願いが叶う穏やかさもあり、胸を打つ小さな冒険も、人との愛も…させてやりたいのじゃ。愛は愛でも、形は問わぬ。主の秘めた想いが形に出来る世界なのじゃ。」 私は思わずバーバム神様の顔を見て、少し顔が赤くなったと思います。 その想いを見透かしたかの様にバーバム神様は、微笑まれ頷かれる。私の想いが…形に…。 私の両手がそっと胸に置いて、ぎゅっと握り拳を作りました。唇もきゅっとなって…明日までの命と…私の望みを叶えてくれる世界の転生…私の家族…仕事…未来…色々な想いが回りました。 そして、私は 「…わ、私は、私は!」 ばっと手を広げて、掴んで抱き。 「男になって!本格的なBLがしたいんで!転生します!!」 思いっきり、何十年と隠していた想いを口走りながら、左側の水晶の玉を抱き抱えてました。その様子を、何故か変わらぬ微笑みを浮かばせてバーバム神様は何度も頷かれて…私は転生を決めたのです。
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