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俺の額からオームさんの額が離れ。
続けて、俺をオームさんが見つめながら。
「そんでな、ジン。これは、ギウサの提案だが、お前が成人するまで、この集落での修行と、冒険者ギルドのお手伝いをしたらどうだと提案されたんだ。」
「師匠…が、ですか?」
「そう、もっと、色んな人物と関わって行って欲しいと、ギウサは望んでいるそうだ。」
「……。」
1年だけの経験ではなく、師匠は、この集落で、俺の成長を望んでいる。
…という事は、つまり。
「師匠は、俺と離れたいんですか?」
俺の言葉に、オームさんとガイさんは。
「「 それは、ない! 」」
同時の言葉が響くも、俺は、2人を、見つめ。
「…けど、その選択肢は、そう言っているのに変わりはしません。」
俺は、ふぅーと深い息を吐き、2人に背を向けた。
「…俺…喋り方も、この成長も…この世界の人達と…全く違って…11歳じゃ出来ない選択肢も…出来る…」
ポツリ、ポツリ、漏れる俺の言葉は…最適化を望むお利口の俺じゃない。
「けど。」
俺は、布団を被って。
「そんな俺を大事にしてくれる…ギウサ師匠との時間…削るまでして…成長なんか、したくねぇ…よ。」
俺からは、2人の表情は見えない。
けど、その2人が声もなく息を飲んだ音は聞こえた。
そして、ガイさんの声が聞こえる。
「…ジン君、申し訳無かった。僕達もギウサ君も、色々と事を急ぎ過ぎたようだ。」
俺の胸が、キュッと痛くなる。
なんで、こんな気持ちも、要望も出してしまったんだろう…。経験の記憶があっても、分からない気持ちがそこにあった。
俺は、被っていた布団から顔を出し、2人に向けていた背中を止めて、向き直す。
2人の顔は、それぞれに、大人の笑顔を向けていた。
「大人は欲張りすぎて、子供の意見を置いてちまうからよ。…いけねぇな。俺達は。」
「全くです。生き延びる術は、充分に持ってるんですよ、ジン君は。」
「あぁ、ジン、お前の気持ち、大事にするぜ。」
そう言って、立ち上がるオームさんは、部屋の扉に近付き開ける。
そして、何かの首根っこを捕まえて、部屋の中に引き摺りこんできた。
めっちゃ目が泣き腫れてるギウサ師匠だった。
「おら、ギウサ。何でも、ジンの為に動くのはいいが、子供だってぇのを忘れちゃいけねぇよ?」
「そうですよ、子育ては成長ばかりじゃなくて、'思い出'も大事ですよ。」
「ふ、ふぇえええええええ!!ごめんサーー!」
ギウサ師匠が、俺のベットに飛び込んできたので、泣き腫らしている師匠のほっぺたを、みょーんとよこにひっぱった。
「ぶっ。」
「ふっふっ。」
オームさんとガイさんが笑い、変顔になった師匠の顔を見て俺も笑った。
師匠も、目を腫らしながらも、笑って。
俺は、手を離し腹の音を鳴ってしまった。
4人で大笑いが響き。
「じゃぁ、飯にするか。」
その言葉に、頷き、ゆっくりと俺は、ベットから降りて皆で晩御飯を食べに行った。
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