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ガッデムの視点
「君達の力を見込んで、お願いがあるサ」
白い笑みほど疑えって、親が言ってた気がする。ギウサのその言葉に、俺は遠慮もしねぇで睨み返してやったんだ。
それでも、ギウサの笑みは変わらず。
「そ、そんな顔をして欲しくないのサ。大丈夫!君達にも迷惑をかけない、極めて優秀なボクの弟子を紹介しょう。じゃーん。」
そう言って、出てきたのは、小さい青い髪であどけなさが残る…って、子供。しかも、やる気は満ちてますと言わんばかりの笑顔だ。そんな子供に、ギウサは、片膝ついて両手を差し向ける。
「ボクの一番弟子!ジンでーーーす」
「し、師匠。物凄く恥ずかしくなる紹介の仕方は……」
なんだ、この茶番劇は。
俺は舌打ちをして、こう言ってやった。
「は?俺は、反対」
大反対。なんのまぐれか知らねぇけど、俺は、大反対をしたにも関わらず、他の三人はこいつを認めやがった。
特にフローは、このがきんちょをやけに褒める。道中でも、ちやほやちやほやしやがって。むかつく気持ちを押さえながら、クエストの魔物が出るドリトルの森へ。
そして、大量のスモールスパイダーの子供と対戦だよ。切っても、切っても、切っても、次々と襲ってくる。
「ち、フロー!大丈夫かっ」
「どうにかっ、けどっ、魔法が間に合わないっ」
「くそっ」
俺も、ロイドも近接。他の二人が、魔法使えるのに詠唱時間が掛かる。あぁ、頭ん中が、ごちゃごちゃしてきた。俺は、フローの方から少し意識を離した時だった。
「痛いっ」
フローの声に振り返ると、がっちりとフローの足首に噛み付くスモールスパイダーの姿が目に入って、頭の中が、真っ白になった。
「てめぇ!フローから、離れろ!」
俺は、剣の切っ先を噛み付いているスパイダーの腹にぶっ刺した。飛沫をあげて、絶命したが、フローは、しゃがみ、一気にそこに大量のスパイダーが襲いかかったんだ。
――死ぬ――
咄嗟に、俺は、フローに覆い被さって目を瞑る。死をも覚悟した俺だったんだが。
「トルネード」
物凄い風の音が巻き起こり、俺とフローはしがみついたまま動けなかった。
「何!?何が起こっているのっ」
「わ、わかんな……」
何とか、目を開けると、物凄い竜巻の中心に俺とフロー、それと、片手を上げて、小さい青髪のがきんちょが立ってた。俺らを守るように。
「師匠!ロイドさんとプーロさんは!」
「大丈夫サ!ジン!そのまんまやっちゃいな!」
おいおい、嘘だろう……
「トルネードカッター」
全てのスパイダーがトルネードに巻き込まれて浮いていた所に、更に魔法を無詠唱で唱えるがきんちょ……いや、ジンは、残さず、スパイダーを切り刻んで。
「ウォーターボックス」
あっという間に、次の無詠唱魔法で、水の箱と思われるどデカい箱に、スパイダーを投げ入れて終わらせてしまった。
俺は、言葉にならなくて、ただ、ジンを見つめるばかりだった。
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