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現れたのは、白いフォルム、自分よりも10cm以上の7頭身ある兎だ。
ちゃんと、自分と同じで、二本足で立ち手は丸っこいフォルムに背中に何かを携えている。
…アニメみたいな、目の細さで、八に口がある。けど、雰囲気が圧倒的にほんわかと優しい雰囲気が出ているのもあったのだが、言葉が詰まり、何も言えないでいると、その兎?は。
「君、ドワーフさんじゃないサ。人族…にしては、うん。良いサ、なんなんないサー。中に、お入りサ、ちっこい子。」
何も言えてない俺を優しく招き入れて、この茸の家の居間に案内された。
入り口で靴を脱いでと言われ、脱ぎ、案内される床はふかふかと心地よく、足が気持ちよくて、家具がどれもこれも可愛い。
茸のテーブルに茸の椅子。
自分が持っている本をその茸のテーブルに置いて、椅子に座ると固さが丁度よく、背もたれは自分の背中に合わせて包み込んでくれる感触に顔が綻び笑って。
「この椅子も床も気持ちいい…」
感想を口にすると、兎さんは、わはははと笑い。
「ボクのキノコハウスは、住み心地、世界一サ。」
そう言って、兎さんは、俺に飲み物と美味しそうなパンを出してくれた。
「ボクの名前は、ギウサ!楽しい感情を持つ生き物を喜ばすのが大好きなのサ!さぁ、先ずは、お腹いっぱいにしようサ。」
「あ、はい。俺は、ジン。…その、頂きます!」
兎もとい、ギウサが出してくれのは、蜂蜜ジュースと茸の炒め物が入ったパン。
ふっくらとしていて、中は茸なのにお肉を食べたジューシーさがある。夢中で食べ終わると満足して、手を合わせて。
「ご馳走様でした…すっごく美味しかったです。」
こんな美味しいパンに中の茸が、美味しくて、まだ口の中に旨味が残っている。そんな様子の俺を、ギウサは笑って。
「むふー、お口に合ったのなら、良かったサ。ジン、もし、良かったらお話しないかサ?こんな、へんぴな場所にくるのは、ドワーフばかりサ。もっと、君とお話したいサ。」
そんな提案をしてくれたギウサに、俺は頷いて食べ終わった食器の後片付けをしてから、再び椅子に座り今までの経緯を軽く話した。
気が付いたら海岸に居て、一応、手探り状態で歩いてきたのと。ただ、記憶が一部しか無く、今夜の住まいも、不安だとも。
この本のお陰で、一先ず、なんかしらの知識はあるとまで、話せば、ギウサは、何故か、おいおいと泣いて。
「そ、そんな、その歳で知識もそこそこに…うううう。うにょん、うにょょょょ…ぐにょ、了解したサ。任せなさいサ!ボクの知識!経験を!たっっくさん使って、君を1人前にさせようじゃないかサ!」
ギウサは、早速、俺を連れたって1度、外に出る。
俺は慌てて本を持ち、引き摺られるまま、外に出ると、この茸の裏に案内された。
そこに広がるのが、小さな魔法陣?みたいな場所だ。原料が分からないが、柵もある。
「ジン。先ず、まだ判明していない君の秘めた力を解放しないといけないサ。その、結界に立つサ。」
「………ば、爆発したりしない?」
「はっはっはっ、ないないサ。」
ギウサの手が、躊躇している俺の背中を優しく擦る。よ、よよし、その結界が描かれている場所まで、意を決して歩く。
柵の扉を開けて、いよいよ、描かれた結界の上に足を置いた。
……まだ、何も起きない。 もう1つの足も置いて、ギウサの方を振り向く。
すると、ギウサが背中に携えている何かを引き抜き、自分に構えてきた。
それは、大きな銀色の装飾を施されている立派な鍵。
その鍵が、淡く光り始め、ギウサも近付き、結界の上に立った。
少し、自分との距離がひらいている状態で、その鍵を振りかぶり、その結界に向けて下ろす。
勢い良く、その結界の地面にまで、ぶっすりと刺さった鍵が強い光を放ち、俺の瞳は思わず目を細め。
「先人の光よ、我が鍵に力を与え、その秘めたる力の有り様を解放せよ! 〖ファイガブ〗」
ギウサが声を放ち、その瞬間、描かれていた結界から無数の光と風が下から巻き起こり、俺を包み込み、足を踏ん張っていたが、軽く浮き上がるのを感じた。
次の瞬間、刺していた筈の鍵は、いつの間にか、引き抜かれて目の前にギウサが居たんだ。
ギウサは、目にも止まらぬ鋭い動きで、本ごと俺をその鍵で押し込んで…右へ回した。途端に、本は俺の中に…。
そして、あらゆる光の色が俺を包み込んだんだ。
あぁ…凄い。
俺が、まだ知らない魔法の知識が止め止めなく頭に埋め込まれていくのが分かる。
一際、大きな光が、俺とギウサを包み込んで、意識が徐々に薄らぐと思ったら…逆にハッキリし、その光も止んだ。
埋め込まれていたと思った鍵は、無い。けど、本も無い。ギウサは少し離れた所で鍵を構えていたのだが、にっこりと笑って鍵を背中に戻し。
「はい、これで、残りの魔法も使えるサ。本の知識も、ジンの頭の図書館に収めたから、知りたいと思えば頭の中に出てくるサ。」
「…ま、まじかぁ。ギウサ君って、もしかして、凄い…種族の子?」
余りにも、驚きの連発で、俺の顔はもう驚き過ぎで顔の表情がかなり鍛えられた気がする。
それに、何となく、ギウサ君の力が、その見た目に反して、確実に強いと思われる。
俺の言った言葉に、ギウサは、大きく笑って俺に近付き、頭を撫でてきた。
「あーーーーっはっはっはっ!世の中は、ボクよりも強い種族がゴロゴロ居るから、大した事ないサ。さぁ、今日は、ここまでにしとこうサ。君の部屋は…よし、上に作ろうサ。」
何か、とても不穏な事を言っている気がするけども、よくよく撫でられて、少し腰が抜け駆けている俺を意図も簡単にお姫様抱っこしてくれた。な
んか、ギウサの感触はとても気持ちよくて、ぎゅっと抱き締めるとふわっとしたら優しい気持ちになる。それに、軽く眠くなる。
…抱えられたまま家に戻ると、ギウサは、再び鍵を片手で引き抜くと、左側のスペースに向き、器用に天井にぶっ刺して、左に回す。
すると、茸天井から階段が現れた。……もう、凄すぎて、ぽかんとなるも、その階段を上がれば2部屋で、俺を左の部屋に入れてくれて、もこもこふわふわのベットに寝かしてくれた。
ギウサ以上に柔らかく気持ちいいそのベットに包まれて俺は…本日の意識を失った。
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