負けぬ心と心理戦

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負けぬ心と心理戦

そこからの俺と師匠は、互いの心理戦や絡んだ時の相手の様子の見方や考えの一部を、シュミレーションするのに特化させると決めた。 その為に、身体を回復させて、何度もギウサ師匠の作る影との攻防戦をしまくった。 嫉妬と憎しみがこもった相手の対応、馬鹿正直だけじゃなく、姑息に頭を考えて、俺を泥沼に落としてくる罠。 ギウサ師匠は、その対策も兼ねて、敢えて、2週間、俺と会わず、ギルマンの動きやその仲間の動きを観察してきたそうだ。 ギルマンだけではなく、仲間内の攻撃スタンスも形を変えてくれる。 これは、誰かに見せる訳にもいかない。 そして、オームさんやガイさんが、教えてくれる事も出来ない。 1年間、みっちり、俺を見てきたギウサ師匠にしか出来ない最高の修業だ。 …そう言えば、生まれ変わる前の自分の時、飲食店で人の気持ちを必死に考えた事があった。 気遣いや言葉遣い、相手の表情から汲み取れと。なら、形は違えど、俺は、その経験も生かす! 前に生きてきた自分は、無駄じゃないと確信に変わった瞬間でもあった。 自分の頭の中に、過去にあったその時の記憶が、明確に思い出される。 その時に感じた辛さも失敗も、全てが報われた感謝の言葉も全て。 凄い勢いで、走馬灯に駆け巡り、その記憶達が自分の中におさめられた本に、強い光を放ちながら吸い込まれていく光景も見えた。 その、光が1つ、本の中に入る度に、力が湧いてくる。 長い時間が、掛かったと思えば。 ギルマンの影の攻撃が今にも当たる瞬間に、意識が戻り、咄嗟に、俺は、武器にも、全身にも、何かを解放したんだ。 ガッッギンンンンンッ! 俺の槍が、ウォーハンマーの攻撃を受け止めたのだ。 影のギルマンが、歯ぎしりをするも、俺の両腕は、力が湧いて出てくるのか、血流が浮かび、相手の攻撃をさせない状態だった。 躙り寄る俺は、その影に向かって。 「終わりだ、ギルマン。」 そういい、相手のウォーハンマーを上に音を立てて、弾き飛ばしたのだ。 ギルマンの影のウォーハンマーは、上に上がり、その視線が上を向いた瞬間、俺の懇親の一撃がその影の脇腹を目掛けて入ったのだ。 ギルマンの影は、飛ばされて、地面を削りながらゴロゴロと転がり、俺は、追いかけ、ウォーハンマーがカランと音を立てて、地面に落ちる。 そして、ギルマンの影の身体が止まり、呻きながら上を見上げた。 その時に、俺は、槍の切っ先を相手の喉元にやった。 …暫しの沈黙の後。 「良くやった、ジン。降参だ。」 師匠の言葉が聞こえて、俺は、槍を捨てた。 師匠も、影を消して、元の姿に戻り、周りの景色も元に戻ったんだ。 俺は、師匠に抱きついて、師匠もまた、俺を抱きしめて返し、今度は、2人で泣いてた。 身も心も、大事な事を教えてくれた師匠は、白く、二本足で歩き、語尾をつける時もあれば、無い時もある、親代わりの大切な人になっていた。
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